「親が亡くなって、実家をどうすればいいか、何から手をつければいいかわからない…。」
そう感じている方は少なくありません。
相続後の手続きには期限が定められているものが多く、正しい順番で動けば数百万円の節税になる一方、後回しにするほど使える手段が一つずつ消えていきます。
この記事では、船橋市など千葉エリアで相続不動産を数多く見てきた宅建士が、相続後にやるべきことを順番に解説します。
- 相続後に期限がある手続きと、その順番
- 実家の「現在の状態」で確認すべきこと
- 「売る」「貸す」「空き家のまま」の判断・考え方
- 専門家への相談先と役割分担
相続後にやること|期限がある手続きを先に押さえよう
| 期限 | 手続き | 内容 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 3ヶ月以内 | 相続放棄・限定承認の判断 | 単純承認・限定承認・相続放棄を選択。何もしなければ自動的に単純承認に | 全員 |
| 4ヶ月以内 | 準確定申告 | 被相続人の1月1日〜死亡日までの所得を申告・納税。 | 被相続人に一定の所得があった場合 |
| 10ヶ月以内 | 相続税の申告・納付 | 遺産総額が基礎控除額を超える場合に申告。小規模宅地等の特例を使う場合も、期限内の遺産分割・申告が必須 | 遺産総額が基礎控除を超える場合 |
| 3年以内 | 相続登記 | 不動産の名義を相続人へ変更。令和6年4月1日以降は義務化(過去の未登記分も対象)。期限内に正当な理由なく行わないと10万円以下の過料 | 不動産を相続した全員 |
相続開始後には、期限が定められた重要な手続きがいくつかあります。
制度の概要や注意点などをわかりやすく解説します。
【3ヶ月以内】相続放棄の判断期限
親が亡くなったとき、最初に決めなければならないのが「相続をどうするか」という選択です。
相続には3つの方法があり、「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」にどれかを選ぶ必要があります。
- 【単純承認】:プラスの財産もマイナスの財産(借金など)もすべて引き継ぐ。何もしなければ3ヶ月後に自動的に単純承認となる。
- 【限定承認】:プラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を引き継ぐ。相続人全員が共同で家庭裁判所へ申述する必要がある。
- 【相続放棄】:プラス・マイナスの財産を一切引き継がない。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述する。
実家を相続する場合、多くのケースでは単純承認を選ぶことになりますが、親に多額の借金があった場合や、価値の低い不動産しか残っていない場合は放棄や限定承認を検討する必要があります。
3ヶ月以内に財産の調査が終わらない場合は、家庭裁判所に「期間の伸長」を申し立てることで期限を延長できます。
ただし、何もしないまま放置すると単純承認とみなされるため、判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
【4ヶ月以内】準確定申告
準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)に代わって、相続人が所得税の申告と納税を行う手続きです。
この期限は「相続を知った日の翌日から4ヶ月以内」です。
被相続人が1月1日から亡くなった日までに得た所得をまとめて申告します。
期限は、「相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内」です。
注意が必要なのは、前年分の確定申告を済ませないまま1月1日〜3月15日の間に亡くなった場合です。
この場合は、前年分と本年分、2期分の準確定申告を同じ4ヶ月以内に行う必要があります。
注意点
- 相続人が複数いる場合は連署が原則
相続人が2人以上いるときは、原則として全員が連署した申告書を1通提出します。やむを得ず別々に提出する場合は、他の相続人に申告内容を通知する義務があります。
- 控除の計算は「死亡日時点」が基準
準確定申告では、各種控除の扱いに独自のルールがあります。 - 医療費・保険料:死亡日までに被相続人本人が支払ったものだけが対象です。死亡後に相続人が支払った入院費などは含められません。
- 配偶者控除・扶養控除:年の途中で亡くなった場合でも月割り計算はせず、死亡日時点の状況で判定します。
- 提出先は被相続人の納税地を管轄する税務署
申告書には「確定申告書付表」(相続人の氏名・住所・続柄などを記入)を添付します。還付が発生する場合、代表者がまとめて受け取るには別途「委任状」も必要です。e-Taxでの提出も可能です。
4ヶ月は葬儀や他の手続きに追われているとあっという間です。
被相続人の収入の種類(年金・給与・不動産収入など)、医療費の領収書、保険料の控除証明書などは早めに整理しておくことをおすすめします。
【10ヶ月以内】相続税の申告・納付(対象者のみ)
相続税は、受け継いだ遺産の総額が基礎控除額を超える場合にのみ発生します。
該当する場合は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、管轄の税務署へ申告と納付を済ませる必要があります。
基礎控除額:3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、
3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円
遺産総額がこの金額以下であれば、相続税はかかりません。
ただし、評価額は固定資産税の評価額とは計算方法が異なるため、正確な判断は税理士への確認が必要です。
遺産の中でも、特に評価額が高くなりやすいのが土地です。
しかし、自宅や事業用の土地に多額の相続税がかかると、生活が成り立たなくなるケースもあります。
そこで設けられているのが「小規模宅地等の特例」です。
要件を満たせば、土地の評価額を最大80%減額できます。
| 種類 | 減額割合 | 上限面積 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 (自宅の土地) | 80%減 | 330㎡まで |
| 特定事業用宅地等 (事業用の土地) | 80%減 | 400㎡まで |
| 貸付事業用宅地等 (アパート・駐車場など) | 50%減 | 200㎡まで |
自宅の土地については、配偶者が相続する場合は、無条件で適用されます。
同居していた親族が相続する場合は、申告期限(10ヶ月後)まで引き続き住み続け、かつ所有していることが要件です。
- 10ヶ月以内に遺産分割を終わらせること
誰がその土地を相続するか、遺産分割協議が申告期限までに決まっていないと、特例が使えません。揉めて期限を過ぎると、多額の税金を一旦納めなければならなくなる可能性があります。 - 税額ゼロでも申告は必須
特例を適用した結果、納める税額がゼロになっても、申告書の提出は必要です。期限内に申告書と遺産分割協議書の写しなどを税務署に提出して、はじめて特例が認められます。
10ヶ月は長いようで、四十九日や戸籍の収集・財産調査・遺産分割の話し合いをしていると、あっという間です。
特例を確実に活用するためにも、早めに税理士へ相談してスケジュールを立てることをおすすめします。
【3年以内】相続登記(義務・過料あり)
亡くなった方が所有していた土地や建物の名義を相続人へ変更する手続きが「相続登記」です。
令和6年(2024年)4月1日から義務化され、それ以前に発生した相続でも、まだ登記していない不動産はすべて対象になります。
- 期限:相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内
- 罰則:正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料
手続きを楽にする「法定相続情報証明制度」
相続登記や預金の払い戻しなど、複数の手続きを行う場合、本来はそのたびに被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本の束を提出しなければなりません。
しかし、法務局の「法定相続情報証明制度」を利用すれば、戸籍書類と相続関係の一覧図を一度提出するだけで、無料で複数枚の「法定相続情報一覧図の写し」を発行が可能です。
そして、「法定相続情報一覧図の写し」は、戸籍の束の代わりに各機関へ提出できるため、複数の手続きを並行して進められ、時間の節約にもつながります。
さらに、令和6年4月1日からは、不動産登記の申請時に「法定相続情報番号」を記載するだけで一覧図の写しの添付自体が不要となり、手続きがより簡単になっています。
実家の「現在の状態」を把握する|動く前に確認すること
名義は誰のまま?(登記確認)
実家を相続して真っ先に確認すべきことは、「現在の実家の名義(所有権の登記名義人)が誰になっているか」です。
亡くなった親御さんの名義になっていると思い込んでいても、法務局で調べてみると、実はさらに前の代(祖父母や曾祖父母)の名義のまま長年放置されていた……というケースが実務上少なくありません。
大前提として、名義がご自身(現在の相続人)のものに変更されていない状態では、不動産を売却して買主に引き渡すことも、賃貸物件として貸し出す契約を結ぶこともできません。
さらに注意が必要なのが、令和6年(2024年)4月1日から相続登記(不動産の名義変更)が法律で義務化されたという点です。
「令和6年4月1日以前に発生した過去の相続」であっても、未登記のまま放置されている不動産はすべて対象となります。
まずは、管轄の法務局で「登記事項証明書」を取得し、現在の名義人が誰になっているかを正確に把握しましょう。
ローンは残っているか?
実家の不動産に住宅ローンなどの借入金が残っているかどうかの確認は必須です。
亡くなった親御さんが住宅ローン契約時に団体信用生命保険(団信)に加入していれば、死亡保険金によってローンが完済されるため、相続人に借金は残りません。
まずは金融機関に連絡し、団信の適用の有無を確認しましょう。
一方、団信に未加入などでローンが残る場合、その借金は「マイナスの財産」として相続人が引き継ぐことになります。
ローンの残額と不動産の売却価値を比較し、そのまま引き継ぐか、売却して清算するか、あるいは借金が多すぎる場合は「相続放棄」を選択するかの判断が必要になってきます。
ローン(抵当権)が残っているかどうかは、相続人の将来にも大きく影響するため、早い段階で確認することが大切です。
他の相続人との合意は取れているか?
遺言書がない場合で、親の財産を複数人で相続する場合、どのように分けるかという「遺産分割協議(相続人全員での話し合いと合意)」をする必要があります。
まずは、相続人全員で実家の扱いについて話し合い、合意が形成されたら、その内容を「遺産分割協議書」として書面に残します。
この協議書には相続人全員が実印を押し、印鑑証明書の添付が必要です。
この書類があることで、法務局での相続登記(名義変更)などの相続手続きがスムーズに進むことができます。
建物の状態・築年数・立地の確認
実家を今後どうするか判断する上で、建物の状況や建てられた時期、そして、どのような場所に位置しているかの確認は、利用できる税金の特例や手放すための制度を利用する際の、重要なポイントとなります。
築年数と耐震性の確認は、売却時の税負担を減らす特例が使えるかの他にも、「売る」「貸す」際の重要項目となります。
実家(空き家)を売却した利益から最大3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を利用するには、建物が昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された一戸建てであることが条件の一つです。
旧耐震基準の建物は、購入を検討する買主にとってリスク要因と映ることが多く、住宅ローンの審査が通りにくいケースもあります。
また、建物の状態とあわせて確認したいのが、実家の立地です。
駅からの距離、周辺の生活利便施設、学校や病院へのアクセスといった条件は、売却価格に直結するだけでなく、賃貸に出した場合の需要にも大きく影響します。
同じ築年数の建物でも、駅近の物件と郊外の物件では市場での評価がまるで異なりますので、今後の方針を決める際に非常に重要ですので、立地の把握はしておきましょう。
「売る」「貸す」「空き家のまま」3つの選択肢を比較
実家の現在の状況を把握できたら、次はいよいよ「どうするか」の判断です。
「売却」「賃貸」「空き家のまま」のうち、どの選択が最適かは、相続人それぞれの事情によって異なります。
判断基準については、「【千葉】相続した実家を売るか貸すか迷ったら読む記事|現役宅建士が判断基準を解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
相続した実家の手続き、誰に頼む?専門家の役割分担
| 内容 | 相談先 |
|---|---|
| 相続登記 | 司法書士 |
| 紛争・トラブル解決 | 弁護士 |
| 相続税の申告 | 税理士 |
| 書類収集・遺産分割協議書 | 行政書士 |
| 土地の境界・測量 | 土地家屋調査士 |
| 売却・賃貸の判断 | 宅建士・不動産会社 |
実家を相続すると、名義変更から税金の申告、時には「国へ手放す」といった様々な手続きが発生します。
しかし、手続きの内容によって頼るべき専門家(士業)の領域は法律で厳格に決まっています。
スムーズに手続きを進めるために、目的に合わせて誰に相談すべきかを分かりやすく整理しました。
<相続登記(不動産の名義変更)>
令和6年4月から相続登記が義務化されたため、実家を相続したら真っ先に相談すべき専門家の一つです。
<紛争・トラブル解決>
「誰が実家を継ぐか」で家族間で意見が対立(法的紛争)してしまった場合、他の相続人との交渉や調停の代理人になれるのは弁護士だけです。もちろん、相続登記の相談も可能です。
<遺産分割協議書の作成・戸籍集め、相続人の調査>
書類作成と官公署等の手続きサポートなどを引き受けてくれます(※法的トラブルになっている事案や、税務・登記申請そのものは除きます)
<土地の境界・測量>
実家を売却する際に土地の境界が分からない場合などに、専門的知識を持って調査や図面の作成を行ってくれます。
<売却・賃貸の判断>
実家という資産の具体的なゴール(売却・賃貸など)への提案・サポート
相続手続きには、司法書士・税理士・行政書士・不動産会社など、複数の専門家が関わります。
「誰に何を頼めばいいかわからない」というご相談は、実際に多くいただきます。
当事務所では、行政書士と宅建士の資格を持つ専門家が在籍しているため、相続に関わる書類手続きから不動産の売却・賃貸の判断まで、ワンストップでサポートすることが可能です。
また、相続登記が必要な場面では提携司法書士、相続税の申告が必要な場面では提携税理士をご紹介するなど、適切なタイミングで適切な専門家につなぐ体制を整えています。
「まず誰に相談すればいいかわからない」という段階からお気軽にご連絡ください。
実家を相続したら何から始める?手続きの順番 まとめ
- 「期限のある手続き」にまず取り掛かる
- 「実家の現況」確認してから「売る」「貸す」を判断
- 一人で抱え込まず、専門家を使い分ける
相続した実家をどうするかは、手続きの期限・建物の状態・ご自身の生活状況など、さまざまな要素が絡み合う判断です。
「なんとなく後回し」にしてしまうほど、選択肢は狭まっていきます。
まずは、現状を把握するところから始めてみてください。
一人で抱え込まず、早めにご相談いただくことが、結果的に一番スムーズな解決につながります。
船橋・千葉エリアで相続不動産についてお悩みの方は、ぜひ当事務所へお気軽にお問い合わせください。 9月開業予定ですので、今しばらくお待ちください!


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