相続した千葉の実家が売れない…6つの理由と現実的な対処法

「相続した実家、早く手放したいのになかなか売れない…。」
こうした状況に悩む相続人の方は少なくありません。
売れない原因はいくつかに分かれており、原因によって取るべき対処法がまったく異なります。
この記事では、「売れない6つの理由」を整理したうえで、売却以外の選択肢も含めた対処法を、行政書士・宅建士の立場からわかりやすく解説します。
相続した実家が売れない6つの理由
①相続登記が済んでいない
不動産を売却する際、亡くなった親名義のままでは買主へ所有権を移転することができません。不動産会社に仲介を依頼しようとしても、現在の所有者が確定していなければ契約を結ぶことができず、売却すること自体ができません。
そのため、まずは「相続登記(名義変更)」を済ませて、「この不動産は自分の所有物です」と示すことが必要です。
これまでは相続したとしても名義変更を先延ばしにされている方も多かったのですが、令和6年4月1日からの法改正により、「相続登記の申請が義務化」がされました。
相続登記が義務化されたことにより、相続を知った日から3年以内に登記をしないと10万円以下の過料が科される可能性があります。
②相続人が複数いて、全員の合意が取れていない
不動産が相続人全員の「共有」状態になる(または遺産分割協議が終わっていない)場合、その不動産を売却や処分するためには、原則として共有者(相続人)全員の合意が必要となります。1人でも反対する人や連絡が取れない人がいれば、手続きを進めることができません。
そのため、相続がまとまらず放置されているうちに代を重ね、甥や姪などが相続人が複数人になってしまう場合が見受けられます。
この場合、被相続人との関係が希薄で、自分が空き家の相続人であると知らない場合も多く、連絡を取って合意を得ることが困難である場合も少なくありません。
また、建物は管理していないとどんどん老朽化します。結果的に危険な空き家として「特定空家等」や「管理不全空家等」などに認定されるリスクが高まり、余計に買い手がつきにくくなるという悪循環に陥ってしまいます。
③建物が古く、買い手の融資が通らない
船橋市の調査によれば、市内の空き家の6割以上が昭和56年(1981年)以前に建築された物件です。つまり、多くの空き家が「旧耐震基準」で建てられており、これらの古い建物が適切に管理されないまま放置されると、特定空家等(危険な空き家)になるおそれもあります。
旧耐震基準の物件や建物の劣化が激しい物件は、担保評価が低くなり、金融機関の住宅ローン審査が非常に厳しくなる、あるいは融資不可となるケースが一般的です。
国土交通省の全国調査によれば、売却が難しい点として「住宅の傷み(30.5%)」や「住宅の耐震性(15.6%)」が上位に挙がっています。
千葉郊外の旧市街や農村エリアでは市街地よりもより買い手自体が少なくなるため、「立地の弱さ」に「ローンが通らない古い家」という条件が重なることで、一般のファミリー層向けに売却することはさらに困難となっているのが現状です。
④接道・再建築不可の問題がある
建物を新たに建てる場合、原則として「幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならない(接道義務)」という建築基準法のルールがあります。
道路に全く接していない土地(袋地)や、細い通路を通らないと敷地に入れない旗竿地などでこの基準を満たしていない物件は「再建築不可」となり、今ある古い家を壊して新しい家を建てることができません。
「土地を購入して、自分の好きな新築を建てたい」と考える購入者にとっては、このような土地はメリットが非常に薄くなります。
船橋市の調査でも、空き家を賃貸・売却する上での課題として「再建築不可(道路付けの悪さなど)」が挙げられており、「所有者等が売却の意思を示しても買い手がつかない」「金額で折り合いがつかない」という理由で売れないという現実が指摘されています。
千葉県内の郊外に見られる古くからの集落や、農地から無計画に宅地転用されていったようなエリアでは、建築基準法が厳格に適用される前に家が建てられたケースが多くあります。
そのため、現代の法律に照らし合わせると「違法状態(既存不適格)」となってしまう物件が多数潜んでおり、相続して初めて「自分の実家が建て替えできない土地だった」と気づくケースも多く見受けられます。
⑤価格設定が相場より高い
実家を相続した子ども世代にとって、実家は思い出が詰まった場所ですよね。そのため、「親が大切にしていた家だから」「昔はもっと価値があったはずだ」といった感情的な思い入れが先行し、周辺の市場相場を無視した強気の価格を設定してしまうケースが多くあります。
船橋市の調査でも、空き家にしておく理由として「満足できる価格で売れそうにない(12.6%)」という声が一定数存在しています。
これは裏を返せば、所有者が希望する「売りたい価格」と、実際の市場が評価する「買われる価格」の間に大きなギャップが生じていることを示しています。
⑥隣地との境界が確定していない
境界線があいまいな土地は、買った後に隣人と「言った・言わない」の越境トラブルになるおそれがあります。そのため、売る前に測量をするのが一般的です。住宅ローンを使う場合も、境界が確定していないと審査に通らないことが少なくありません。
千葉県の郊外や旧農地、古い集落では、境界が「あの木のあたり」「水路の真ん中」といった口約束のまま、何十年も放置されているケースもあります。
境界をはっきりさせるには、土地家屋調査士に依頼し、隣地の所有者全員の立ち会いのもとで合意を得る「境界確定測量」が必要です。ただし、費用は数十万円、期間は数か月かかるため、売主の負担は大きくなりがちです。
「売れない」まま放置するとどうなるか
実家がなかなか売れないと、「とりあえずそのままにしておこう」「いつか状況が変わるかもしれない」と先延ばしにしたくなるものです。
しかし、空き家を放っておいても何も解決しません。むしろ、時間がたつほど持ち主の負担は重くなります。4つのリスクについて解説します。
固定資産税・火災保険・管理費が毎年かかる
空き家であっても、所有している限り固定資産税や都市計画税は毎年必ず発生します。
また、放火や自然災害への備えとして火災保険への加入や定期的な草刈りや空気の入れ替えなど、維持管理には思いのほか手間と費用がかかります。
船橋市の調査でも、空き家を管理する上での困りごととして「遠方に住んでて管理できない」「管理するための費用が掛かる」という声が多く寄せられています。
固定資産税が最大6倍になる場合も
住宅が建っている土地は「住宅用地特例」によって固定資産税が大きく軽減(最大で6分の1)されています。
しかし、法改正により、倒壊の危険等がある「特定空家等」に指定されて勧告を受けた場合、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある「管理不全空家等」として勧告を受けた場合は、この軽減特例の対象から除外されることになりました。
つまり、管理を怠って自治体から勧告を受けると、翌年から土地の固定資産税が最大6倍に増額されてしまいます。
建物は放置するほど劣化し、売りにくくなる
適切な管理が行われない空き家は、老朽化が急速に進みます。屋根や外壁が破損して雨水が入り込めば、柱の腐朽やシロアリの被害が進み、周囲に倒壊や部材飛散などの危険を及ぼす恐れもあります。
建物の傷みが進めば進むほど、買い手にとっては修繕や解体にかかるコストが膨らむため、さらに売却が難しくなるという悪循環に陥ってしまいます。
相続登記の義務化で放置は過料の対象に
これまでは相続した不動産の名義変更を行わなくても罰則はありませんでしたが、令和6年(2024年)4月1日から「相続登記の申請が義務化」となりました。
そのため、相続を知りながら手続きを放置することは法律違反となり、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の対象となります。
さらに、登記を行わずに放置して代替わりが進むと、いざ売却や処分をしようとしても「会ったこともない相続人」が多数存在することになり、全員の合意を得ることが極めて困難な状態(解決困難事例)になってしまいます。
このように、空き家問題は時間が経つほどに選択肢が狭まり、リスクが大きくなっていきます。
売れないのであれば、「なぜ売れないのか」を客観的に分析し、価格を見直すか、あるいは売却以外の「出口戦略」へ速やかに舵を切る決断が求められています。
現実的な対処法 5パターン
実家がすぐに売れないからといって、選択肢がなくなったわけではありません。ここからは、売却だけでなく「活用する」「引き取ってもらう」という他の方法について解説します。
将来的な売却のタイミングを計る上でも、知識として持っておいて損はないですので、ぜひ参考にしてみてください。
賃貸に出す
売れにくい古い実家でも、「賃貸」に切り替えると意外に需要がある場合があります。
近年戸建を探している入居者の方は多くて、小さなお子様がいるご家族やペットを飼いたい方、趣味で使うものが多いので広い家を探している単身の男性など、多数いらっしゃいます。
さらに千葉県内では、グループホームやデイサービスといった介護・日中活動系の福祉事業者が、事業所として一戸建ての空き家を探しているケースも少なくありません。
船橋市の調査によると、空き家の今後の利用意向として「売却」や「賃貸」を希望する回答が半数以上あり、利活用への関心の高さがうかがえます。
賃貸に出す一番のメリットは、毎月家賃が入ってくることです。空き家のままだと固定資産税を払うだけですが、貸せばその税金を家賃でまかなえます。
また、入居者に購入を提案してみるのも一案です。私が勤める不動産会社でも、戸建てのオーナーが現入居者に売却するという事例も実際にありました。
空き家バンクに登録する
不動産会社は仲介手数料が主な収益源となるため、価格が安すぎる物件や買い手がつきにくい立地・築古の物件は避ける傾向にあります。そうした「通常の不動産市場(民間流通)に乗らない物件」の受け皿となるのが、市区町村が主体となって運営する「空き家バンク」です。
自治体が物件情報をウェブサイト等で公開し、空き家を「売りたい・貸したい人」と「買いたい・借りたい人」をマッチングさせる仕組みであり、営利目的ではないため、条件が悪い物件でも掲載して広くアピールすることができます。
千葉県内でも、多くの市区町村が移住定住促進や空き家対策の一環として、空き家バンクを運営しています。
近年は、古い家を安く買って自分でDIY(改装)を楽しみたい層や、都心からアクセスしやすい千葉の郊外・農村エリアでテレワークや二拠点生活を希望する層など、一般のマイホーム探しとは異なる独自のニーズを持ったユーザーが空き家バンクを閲覧しています。
さらに、 全国の自治体の中には空き家バンクの利用を促進する目的で、「空き家バンクに登録した物件」に限定して、残置物の撤去費用やリフォーム費用の一部を補助する独自の制度を設けているケースがあります。
- 木造住宅の耐震改修費用の助成
- 住宅バリアフリー・断熱改修支援事業
自治体のこうした補助金や改修支援をうまく活用すれば、所有者側の持ち出しコストを抑えつつ物件の魅力を高め、次の借り手・買い手へとつなげやすくなります。
「相続土地国庫帰属制度」を利用して国に引き渡す
どうしても買い手が見つからず、賃貸や空き家バンクへの登録も難しい場合の最終手段として、令和5年(2023年)にスタートした「相続土地国庫帰属制度」を利用して、土地を国に引き取ってもらう方法があります。
この制度の目的は、使い道のない土地が管理されないまま放置され、所有者不明土地や空き家・空き地の問題が広がるのを防ぐことにあり、利用者は将来の管理責任や固定資産税の負担からの解放されます。
しかし、「どんな土地でも無条件で、無料で国が引き取ってくれる」というわけではありません。
- 更地にする
- 境界を明らかで隣人トラブルがない
- 却下要件に該当していない
- 手数料と負担金を支払う
割と条件が厳しいので、利用される際は「相続土地国庫帰属制度のご案内」をご覧いただき、千葉地方法務局(電話043-302-1311)にまずはお問合せしていただくのがおすすめです。
更地にして売る
老朽化が進んだ実家をそのまま中古住宅として売り出しても、買い手には「リフォーム費用」や「解体費用」がかかってしまいます。
そのため、建物を解体し「更地(土地のみ)」として売り出せば、新築用地を探す一般購入者や住宅メーカーの目に留まりやすく、売却がスムーズに進む可能性が高まります。
なお、「更地渡し」という方法も選択肢のひとつです。更地渡しとは、売買契約締結「後」に売主負担で古屋を解体してから引き渡す方法で、これなら更地期間中の高い固定資産税を払わずに済み、住宅用地の1/6特例を受けながら買主を探せます。
船橋市には、一定要件を満たす木造住宅の除却費用を補助する「木造住宅除却助成事業」もありますので、まず活用できる制度を確認することがおすすめです。
隣地所有者に売る
細い通路を通らないと敷地に入れない「旗竿地」や、家を建てるには狭すぎる「狭小地」、「接道義務を満たさない再建築不可物件」などは、一般のマイホーム購入者からは敬遠されるため、不動産ポータルサイト等に出してもなかなか買い手がつきません。
しかし、その土地に隣接しているお隣さん(隣地所有者)だったら購入してもらえる可能性があるかもしれません。
隣地の人が買い取るメリットとしては、自分の土地とつなげる(合筆する)ことで土地の形が整うことで資産価値を大きく向上させたり、駐車場や庭として利用したいといったニーズがあるためです。
お隣さんとは日頃から挨拶をするなど、良好な関係を築いておくのも一案です。
あなたのケースはどれ? 状況別・実家を手放す最適な方法
| 状況 | まずやること | 最適な方法 |
|---|---|---|
| 登記が親名義のまま | 遺産分割協議書の作成・相続登記 | すべての選択肢が可能 |
| 相続人が揉めている | 弁護士等の専門家に相談 | 協議完了後に判断 |
| 建物が古い・再建築不可 | 解体・隣地交渉・賃貸を検討 | 売却以外の出口が現実的 |
| すぐ現金化したい | 買取業者へ直接相談 | 業者による買取 |
| 急がず収入が欲しい | 賃貸管理会社へ相談 | 賃貸運用 |
実家を手放す最適な方法は、実家の状況や、家族の事情によって異なります。まずはご自身の状況が以下のどれに当てはまるかを確認し、「次にやるべきこと」を整理しましょう。
①登記が亡くなった親名義のままになっている
親名義のままでは、不動産会社を売ることも賃貸に出すことも、国に引き取ってもらうこともできません。
まずは、司法書士などの専門家に相談し、「自分の名義」に変更してください。
なお、相続した実家を売却する場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円が控除される「空き家の特例」が適用できる場合があります。税務上のメリットも大きいため、売却を検討される際は税理士への相談もおすすめです。
②相続人が複数いて、誰が相続するかで揉めている
相続で揉めている場合は、第三者である専門家を交えて権利関係を整理するか、どうしても関わりたくない場合は「自分の持分のみの売却(譲渡)」や、期限内であれば「相続放棄」を検討するのも手です。
他にも、一部の相続人が行方不明で合意が取れない場合や、どうしても協議がまとまらず管理できない状態になっている場合は、裁判所を通じた「財産管理制度」を活用することも可能です。
利害関係人として家庭裁判所や地方裁判所に申し立てを行い、「不在者財産管理人」や「管理不全土地(建物)管理人」を選任してもらうことで、管理人に代わって売却などの処分を進めてもらうという制度もあります。
③建物が古すぎる、または再建築不可の立地である
古い家や接道義務を満たさない土地は、市場に出してもなかなか売れません。
建物を解体して更地にする、土地の価値が上がる「隣地の人」に直接買い取りを打診する、リフォームして「賃貸」に出すといった工夫が求められます。
最終手段として「国庫帰属制度」もありますが、更地化や境界確定が必須条件となります。
④価格が下がってもいいので、とにかくすぐに現金化したい
不動産会社に依頼して一般の買い手を探すのは時間がかかりますが、「買取」であれば不動産会社が直接買い取ってくれるため、数週間〜1ヶ月程度で売却すること可能です。
市場価格より安くはなりますが、残置物をそのままにして引き取ってもらえたり、売却後の不具合に対する責任(契約不適合責任)を免除されたりするメリットがあり、手間と時間を省きたい方に適しています。
⑤手放すのを急いでおらず、毎月の収入が欲しい
古い戸建を好む層や福祉事業者、外国籍の方など、借り手のニーズに合えば安定した家賃収入が期待できます。
自治体によっては、バリアフリーや断熱のリフォームに補助金が出たり、「マイホーム借上げ制度」のように家賃を保証してくれる仕組みを案内していたりします。リフォームにかかる費用と入ってくる家賃を比べながら、無理のない形で進めるのがおすすめです。
お困りの場合は、ご相談ください
「まだ家族の話し合いが終わっていないけれど、売れる金額によっては手放したい」
「法的な手続きと、不動産の処分を同時に進めたい」
相続した不動産のことは、法律と不動産の問題が絡み合っているため、どこから手をつけたらいいのかと迷う方が多くいらっしゃいます。
さえぐさ行政書士事務所は、行政書士と宅建士の両方の立場で、遺産分割協議書など権利関係の整理と、不動産をどうするか(売る・持ち続ける・活用する)のご相談に対応しています。
「まだ何も決まっていない」「何から始めればいいか分からない」という状況でも大丈夫です。
千葉県内の相続不動産でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
