「遺言書はお金持ちの家の話」「家族みんな仲が良いから大丈夫」「遺言書なんて、うちには関係ない」
そう思っていませんか?
実は、遺言書が最も必要なのは、財産が少なく仲の良い”普通の家庭”かもしれません。
遺言書がないまま親が亡くなると、たとえ仲の良い兄弟間でも、相続人全員の実印・印鑑証明書の収集や「遺産分割協議書」の作成など、想像以上の手続きの負担が残された家族にのしかかります。
不動産が含まれていれば、なおさらです。
この記事では、専門家の視点から、「普通のご家庭にこそ遺言書をおすすめする理由」と「遺言書の種類・書き方のポイント」をわかりやすく解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、参考にしてください。
普通の家庭でも遺言書が必要な理由
「うちには大した財産がないから、遺言書なんて必要ない」
私も、以前は遺言書を作成するということは非常に大それたようなことに感じていて、一般家庭には必要ないと思っておりました。
しかし、遺言書がないと、残された家族は遺産相続の手続きもすぐにはできず、「遺産分割協議書」の作成など、かなり大変な事態になることがわかりました。
なぜ、遺言書がないと大変な事態になるのか、その理由を分かりやすく解説します!
遺言書がないと、必ず遺産分割協議書が必要になる(法定相続分以外で分ける場合)
遺言書がない場合、相続人全員で遺産の分け方を必ず話し合わなければなりません。
その結果を書面にまとめたものが「遺産分割協議書」です。
遺言書がない場合でも、「法定相続分(法律で定められた割合)」の通りに財産を分けるのであれば、遺産分割協議書の作成は必須ではありません。
しかし、もし、財産の中に不動産が含まれている場合は、全て均等に分割して財産を分配することは不可能ですよね。
その際に、「遺産分割協議書」は必ず必要になってきます。
この遺産分割協議書の作成は、実はかなりハードルが高いのです。
- 相続人全員の実印と印鑑証明書が必要
- たった1人でも欠けると、協議書は完成しない
遺産分割協議書には、相続人全員が実印で押印し、全員分の印鑑証明書を添付しなければなりません。
例えば、兄弟が3人いれば、3人全員の実印と印鑑証明書が必要です。
そして、
- 「遠方に住んでいて連絡が取りにくい」
- 「忙しくてなかなか実印を用意してもらえない」
- 「相続人の1人が認知症になっていて、署名・押印ができない」
上記のような理由で、兄弟のうち1人でもかけてしまうと、協議書は完成しません。
その結果、「不動産の名義を特定の誰かに変更」や「預貯金の全額解約」等、相続の手続きがスムーズにできなくなってしまいます。
しかし、遺言書があれば、相続人同士の話し合い・遺産分割協議書の作成が必要ありません。
このように、遺言書を作成しておいてもらうことで、残された家族の負担が大きく変わるのです。
実家の土地・建物は分割できないため、遺言書がないと揉めやすい
預貯金などの現金であれば、例えば「兄弟2人で半分ずつ」といったように、きっちりと均等に分けることができます。
しかし、実家の土地や建物は「物理的に半分に割る」ことができません。
そのため、どうしても「誰か一人が実家を丸ごともらう」という形になりやすく、実家をもらえなかった他の相続人との間に不公平感が生まれやすくなります。
また、均等に分けられない実家をどうするかで話し合いを行う場合も、「親との思い出があるから残して自分が住み続けたい」と考える相続人と、「自分は住まないから、早く売却してお金で分けてほしい」と考える相続人との間で、意見が真っ向から対立してしまうことがよくあります。
家族それぞれの生活状況や思い入れが違うため、話し合いがまとまらずにもめやすいのです。
このように、遺言書がない場合、不動産を誰が相続するかは相続人全員の話し合い(遺産分割協議)によって決めなければならず、仲が良かった兄弟間でも揉めてしまう事案も多々見受けられます。
しかし、生前にきちんとした遺言書を残しておけば、こういったもめごとを未然に防ぐことができるのです。
被相続人(亡くなった方)が、「不動産を特定の相続人に相続させたい」「遺産分割で争いになるのを避けたい」という意向がある場合には、遺言書の作成は非常に有効とされています。
遺言書で「実家は長男に、その代わり長女には預貯金を」といったようにあらかじめ決めておけば、相続人全員での大変な話し合いのプロセスを省くことができ、残された家族はスムーズに手続きを進めることができるのです。
どんな遺言書を作ればいいのか
ここまで遺言書が家族を守るために大切だということを解説してきましたが、「じゃあ、実際にどんな遺言書を作ればいいの?」と迷ってしまいますよね。
一口に遺言書と言っても、いくつかの種類があります。
その中で、私たちが一般的に利用するのは、大きく分けて「自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)」と「公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)」の2種類です。
自分で手書きをして作成する手軽な方法から、法律のプロである公証人に作成を任せるより確実な方法まで、それぞれに異なる特徴やメリット・デメリットがあります。
ご自身の希望や財産の状況に合わせて最適な方法を選べるよう、まずはこの2つの遺言書の違いについて、詳しく見ていきましょう!
自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
| 比較ポイント | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成方法 | 自分で全文を手書きする(※財産目録はパソコン等でも可) | 公証役場で公証人に作成してもらう |
| 費用 | 無料 | 遺産の額に応じて手数料が計算される |
| 証人の立ち会い | 不要 | 必要(2人以上) |
| 無効になるリスク | ルール違反で無効になるリスクがある | プロが作るため、無効になる可能性は低い |
| 紛失・改ざんのリスク | 自宅保管の場合、紛失や改ざんのおそれがある | 原本を公証役場で保管するため安全 |
| 亡くなった後の「家庭裁判所の検認」の有無 | 必要 | 不要 |
それぞれの遺言書の特徴について、さらに詳しく解説していきます。
自筆証書遺言について
自筆証書遺言は、自分で手書きして作成する遺言書を指します。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 紙とペン、印鑑さえあれば作成できる いつでもどこでも作成可能 誰にも知られず秘密にできる 無料 | 遺言者を見つけた家族は勝手に開封できない 家庭裁判所での検認て手続きが必要 相続人はすぐに相続手続きができない |
遺言者が自ら本文、日付、氏名を手書きし、押印して作成する遺言書です。(財産目録はパソコン等でも作成可能です)。
いつでも手軽に作成や書き直しができ費用もかかりませんが、 間違えると無効になるおそれがあり、自宅保管では紛失や改ざんのリスクがあります。
また、遺言者が亡くなった後、遺族は勝手に開封できず、家庭裁判所で「検認」という手続を受ける必要があります
このように、自筆証書遺言は手軽な反面、「無効になりやすい」「紛失しやすい」「検認が面倒」というデメリットを補うために、作成した自筆の遺言書を法務局(国)で安全に預かってもらえる「自筆証書遺言書保管制度」が令和2年(2020年)7月10日から始まりました。
自筆証書遺言書保管制度は、1件3,900円の手数料はかかりますが、法務局の職員が書き方のルールをチェックしてくれ、紛失や改ざんの心配がなくなります。
また、この制度を利用すれば、家庭裁判所での「検認」手続きも不要になることと、遺言者の死後に指定した方へ保管の通知が届きます。(遺言書の内容については通知されません)
相続人の一人が遺言書情報証明書(遺言書の写し)を取得した際にも、他の全相続人へ自動的に通知されるので、他の相続人が遺言書の存在を知らされないリスクを回避できます。
このように、「自筆証書遺言書保管制度」は、自筆証書遺言の「手軽さ」という利点をそのまま生かしつつ、「無効・紛失・改ざん・未発見」といった問題を解消。
そして、遺言を残す方の生前の意思を守るのと同時に、残されたご家族が確実にそれを受け取れるようにサポートする仕組みとなっています。
公正証書遺言について
公正証書遺言とは、「公証人」という法律の専門家に作成してもらう遺言書です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 法律のプロが作成するため、失敗がない 「公証役場」で安全に保管される 紛失や書き換えの心配ゼロ 相続人はすぐに相続手続きができる | 手数料と手間がかかる 完全に秘密にしておけない 証人2人以上の手配が必要 デメリット |
作成時には公証人の他に「証人」と呼ばれる人が、2人以上立ち会う必要があります。
証人は、未成年者や遺産を受け取る予定の人(推定相続人や受遺者)などは、法律上、証人になることができません。
そのため、利害関係のない信頼できる第三者にお願いする必要があります。
もし適当な方が見つからず、公証役場などに手配を依頼した場合には、公証人の手数料とは別に、証人への日当(費用)が追加でかかってしまいます。
そして、補足ですが、公正証書遺言を作成する際は、必ずしもご自身で公証役場に出向かなければならないわけではありません。
病気などで公証役場に行くことができない場合には、公証人が病院やご自宅などに出張して遺言書を作成してもらうことも可能です。
ただし、公証役場に直接出向く場合と比べて、追加の費用がかかります。
- 病床執務加算:遺産の額に応じて計算される基本手数料が1.5倍になる。
- 日当:1日あたり2万円(4時間以内の場合は1万円)
- 旅費:公証人が移動するための交通費などの実費
また、遺言者の症状が重いなど急を要するケースでは、休日や通常の営業時間(執務時間)外であっても作成の対応をしてもらうことができます。
体調や移動に不安がある場合でも、追加費用はかかりますが、ご自身の状況に合わせて公証人の出張制度の利用も検討してみてください。
遺言書に書くべき内容
遺言書は、ご自身の財産をめぐって家族が争うのを防ぎ、ご自身の意思を確実に反映させるための大切なものです。
そのため、以下のポイントを押さえて、具体的に記載する必要があります。
書き始める前に、まずはご自身が持っている預貯金や不動産(実家の土地や建物など)などの財産をリストアップして整理しましょう。
- 「誰に」残すか(人物の特定)
- 「どの財産を」残すか(財産の特定)
- 「どのぐらい」残すか(割合や金額の指定)
「妻に全部任せる」といった曖昧な表現ではなく、「長男の〇〇に、別紙1の不動産を相続させる」といったように、第三者が見ても明確に分かるように書くことが重要です。
① 「相続させる」と「遺贈(いぞう)する」の使い分け
誰に財産を譲るかによって、法律上の正しい言葉遣いが異なります。
- 配偶者や子どもなど(推定相続人)の場合:「相続させる」または「遺贈する」と記載
- 法定相続人以外(世話になった知人・寄付先の団体など)の場合:必ず「遺贈する」と記載
② 財産目録(リスト)をつける場合
財産が多い場合、自筆証書遺言ではパソコンなどで作成した「財産目録」を添付することができます。その場合は、遺言書の本文の中で「別紙1の不動産を〜」「別紙2の預貯金を〜」といった形で、どの目録の財産を指しているのかを特定して記載します
自筆証書遺言をご自身で書く場合は、これらの内容に加えて「全文の自書(財産目録を除く)」「作成した日付」「署名」「押印」という厳格なルールを守る必要があります。
一つでも欠けると無効になってしまうため、ご注意ください。
まとめ 仲の良い家族だからこそ、早めに遺言書の話をしておきましょう
「うちは家族みんな仲が良いから、遺産で揉めることなんてない。だから遺言書なんて必要ない」
実は、これが相続において最も多い誤解の一つです。
遺言書は、決して大金持ちや複雑な事情を抱えたご家庭、あるいは「もめている家族」だけのものではありません。
今回は、ごく普通の家庭や仲の良いご家族にこそ、遺言書が必要な理由について分かりやすく解説しました。
- 家族間で「遺産分割協議」をしなければならない
- 相続人全員の「実印」と「印鑑証明書」の用意
- 亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本の収集
- 相続人全員の戸籍謄本の取得
親に遺言書の話をするのは、「死ぬ準備をしてほしい」と言っているようで気が引けるかもしれません。
しかし、遺言書は決して「死に支度」ではなく、「残される家族が困らないための、思いやりの手紙」です。
「うちは財産なんてないから」と親御さんが言う場合は、「実家の名義変更や銀行の預金解約に、兄弟全員の実印や戸籍謄本が必要になってすごく大変らしいよ。遺言書を書いておいてくれると、その手間が省けて本当に助かるんだ」と、「手続きの手間を省いてほしい」というスタンスでお願いすると、親御さんも納得して動きやすくなります。
「仲の良い家族」が、親の死後に無用な苦労や悩みから解放され、いつまでも協力し合える関係性が崩れないためにも、ぜひ、親御さんが元気なうちに、ご家族が集まるタイミングなどで前向きに話し合ってみてください。
遺言書の作成について、お気軽にご相談ください!
- 「遺言書の種類(自筆証書遺言と公正証書遺言)の違いが知りたい」
- 「法務局の『遺言書保管制度』について詳しく聞きたい」
- 「自分の家族の場合は、どのような遺言書を作ればいいの?」
など、遺言書の作成や相続に関するご不安・疑問がございましたら、専門家がしっかりサポートいたします。ご家族の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。
少しでも気になった方は、ぜひ当事務所にお気軽にご相談ください!
開業まで今しばらくお待ちください。9月開業予定です。

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