「専任の宅建士が辞めることになった」
その一言で、宅建業を続けられなくなる場合があります。
実は、専任の宅建士が退職して人数が足りなくなってしまった場合、2週間以内に後任を見つけて補充しないと、業務停止や罰金といった処分を受けてしまう可能性があります。
しかも、無事に後任が決まってからも、30日以内に役所へ「変更届」という書類を提出しなければなりません。
本記事では、退職の連絡を受けたその日から何をすべきか、期限・必要書類・後任選びの注意点まで、実務の流れに沿って解説します。
専任の宅建士が退職した場合、まず確認すべきこと
専任の宅地建物取引士(宅建士)が退職すると聞いたら、まず確認すべきは、事務所が「専任者を欠く状態」に陥っていないかどうかです。
これは単なる人員の穴埋め問題ではなく、放置すると業務停止や免許取消しにもつながる法令上の問題です。
「専任者を欠く状態」とは何か(5人に1人以上の設置基準)
宅地建物取引業法では、事務所ごとに従業者5人につき1人以上の割合で、専任の宅建士を置くことが義務付けられています。
「専任」とは、その事務所に常勤し、営業時間中は原則としてその事務所の業務に専従できることを指します。
そのため、他事務所との兼務者や非常勤・アルバイトは専任者として認められません。
宅建試験合格だけでは不十分で、宅地建物取引士証の交付を受けていることも必要です。
退職によってこの「5人に1人以上」の基準を下回った場合、その事務所は「専任者を欠く状態」になります。
まずは、在籍する宅建士の人数と従業者数を照らし合わせ、この状態に当てはまっていないか確認しましょう。
欠員から「2週間以内」に補充が必要
専任の宅建士が退職して「専任者を欠く状態」になった場合、宅建業者は一刻も早く対応しなければなりません。
なぜなら、「2週間以内」という厳格な期限が設けられています。
① 2週間以内にやるべきこと
- 法定数(5人に1人以上)を下回った日から2週間以内に、新たな専任の宅建士を補充する
- 補充方法は、新規採用または社内の配置転換のいずれでも可
② 期限を過ぎて営業を続けた場合のペナルティ
法定数を満たさないまま2週間を超えて営業を続けると、次のような行政処分の対象になり得ます。
- 都道府県知事等による1年以内の業務停止(全部または一部)
- 宅建業者に対する100万円以下の罰金
③ 補充した後にやるべきこと
無事に補充できたとしても、それで終わりではありません。
- 新たな専任の宅建士の就任(または退任)など、変更があった日から30日以内に、許可権者へ変更届を提出する義務がある
専任の宅建士の欠員は、猶予がわずか「2週間」しかないという点で、会社にとって非常にリスクの高い事態です。
退職の連絡を受けたら、まず後任の確保を最優先で動く必要があります。
変更届出の手続きの流れ
変更届の届出期限(変更後30日以内/千葉県)
専任の宅建士が退職(退任)または、新たに入社(就任)し、宅地建物取引業者名簿の登載事項に変更が生じた場合、不動産会社(宅建業者)は変更があった日から30日以内に、変更届を提出する義務があります。
もし、この30日の期限を過ぎてしまった場合は、通常の書類に加えて、遅れた理由や改善の意思を記載した「始末書」の提出が求められるため、速やかな手続きが必要です。
さらに、千葉県の場合は、期限を過ぎると「郵送での提出が不可」となり、窓口への直接持参か電子申請でしか受け付けてもらえなくなるため、速やかな手続きが必要です。
変更届の必要書類(千葉県)
| 必要書類 | 退任(退職)のみ | 新たに入社 | 備考・注意点 |
|---|---|---|---|
| 変更届出書 (様式第三号の四) | 〇 | 〇 | 変更のあった事項(専任の宅建士に関する部分)を記入。 ※令和7年1月からの電子申請の場合は、システムへの入力となるため様式データの添付は不要。 |
| 専任の宅地建物取引士設置証明書 | 〇 | 〇 | 退任や就任どちらにおいても、法定数(5人に1人以上)を適法に満たしていることを証明するため、どちらの場合でも提出が必要。 |
| 略歴書 | × | 〇 | 新たに就任する宅建士全員分が必要。職種に関わらず、現在に至るまでの職歴を詳細に記入。 |
手続き上の重要な注意点
- 身分証明書等の提出廃止について :法令改正により、令和6年5月25日以降、専任の宅建士が就任する際の「身分証明書」および「登記されていないことの証明書」の提出は不要となりました。
- 宅建士個人の手続き(資格登録簿の変更)について :専任の宅建士が就任(入社)する場合、業者としての変更届を千葉県へ提出する前に、宅建士本人が個人の手続きとして「資格登録簿の変更登録(勤務先の変更等)」を完了させておく必要があります。
- 千葉県では、「個人の変更登録申請書の写し」は、変更届の際に必要書類にはなっていませんが、状況に応じて確認書類を求められる場合があるため、宅建士本人から「個人の変更登録申請書の写し」のコピーをもらって、手元に控えを残しておくと安心です。
変更届の提出先(千葉県)
千葉県知事免許を受けている業者の場合、変更届の提出先や提出方法は以下の通りです。
提出先窓口 :千葉県庁の「県土整備部 建設・不動産業課 宅建業閲覧室」(県庁中庁舎7階)
- 紙申請:窓口へ持参するか、レターパックプラスや簡易書留等による郵送で提出
提出部数は正本1部・副本1部の計2部
※郵送の場合は、千葉県指定の「郵送用チェックリスト」と、受付印を押した控えの返送用として「レターパックプラス(赤)」を同封する必要があり
<窓口の受付時間:平日午前9時~11時30分、午後1時~4時30分>
- 電子申請:国土交通省のシステム「eMLIT(イーエムリット)」を利用してオンラインで申請
ただし、代表者変更などで免許証の書換えが伴う手続きの場合は、電子申請を行った後、旧免許証や返信用封筒などを別途郵送する必要あり
※専任の宅建士の交代のみであれば免許証の書換えは生じないため、別途の郵送は不要でオンライン完結
後任の専任者を選ぶときの注意点
後任の専任の宅地建物取引士(宅建士)を選ぶ際、特に注意が必要な「兼業・副業」や「代表者の就任」について、以下のポイントで分かりやすく解説します。
兼業・副業中の宅建士を専任者にできるか?
専任の宅建士になるための最大の条件は、その事務所に「常勤」していることです。
そのため、他の会社でも働いている「兼業・副業している人」を専任者にする場合は、注意が必要です。
後任候補が他社の役員や従業員を兼務している場合、変更届の「略歴書」にその兼務先の職歴も記入した上で、その勤務が「非常勤」であることを証明しなければなりません。
具体的には、兼業先の法人が発行する「非常勤証明書」の提出が必要です。
兼業先でも「常勤」扱いとなっている場合は、専任の宅建士として登録することはできません。
代表者を専任者にする場合の注意点
「専任の宅建士が退職したら、社長(代表者)自身が資格を持っているので、専任者にすればいい」と考える方もいますが、それも注意が必要です。
代表者が専任の宅建士を兼ねること自体は可能ですが、常勤の要件は代表者であっても免除されません。
他の従業員と同様に、その事務所に常勤していることが条件になります。
そのため、代表者が別法人の代表を兼任しているなど、宅建業の事務所に常駐できない場合は、専任者として認められません。
この場合、兼務先から「非常勤証明書」を発行してもらう必要があり、それが出せなければ、別に常勤できる宅建士を確保することになります。
よくある失敗・トラブル事例
専任の宅地建物取引士(宅建士)の交代や退職の場面では、実務上さまざまなトラブルが発生しがちです。
ここでは、不動産会社が陥りやすい「よくある失敗・トラブル事例」を2つピックアップし、そのリスクと対策を分かりやすく解説します。
退職の申し出から実際の退職日までが短く、後任が間に合わないケース
「来週末で辞めたい」といった急な退職の申し出があり、後任探しが間に合わないケースです。
先ほども解説しましたが、専任の宅建士が退職して法定数(5人に1人以上)を割った場合、2週間以内に後任を補充しなければなりません。
しかし、新規採用では、求人から面接〜採用までを2週間で終えるのはほぼ不可能です。
社内に宅建試験の合格者がいても、宅建士証の交付や登録手続きが未了だと役所での手続きに時間がかかり、期限を過ぎて行政処分の対象となる恐れがあります。
あわせて、就業規則で「退職の申し出は◯ヶ月前までに」と定め、急な欠員を防ぐ体制を整えておきましょう。
変更届を出し忘れて更新時に発覚するケース
専任の宅建士が退職・入社したにもかかわらず、日々の業務の忙しさなどが原因で、「変更届(変更後30日以内)」の提出を忘れたまま放置してしまうケースです。
これが最も問題になるのが、5年に1度の宅建業免許の更新のタイミングです。
更新申請時には過去5年間の変更事項が正しく届け出られているかがチェックされ、漏れが発覚すると更新手続きがストップしてしまいます。
期限を過ぎてから提出する場合は、遅れた理由や改善の意思を記載した「始末書」の提出も求められます。
また、宅建士個人が行う「資格登録簿の変更」と会社が行う「業者名簿の変更届」は連動しているため、個人の変更控えのコピーを提出させるなど、会社側で進行状況を一元管理しておくとトラブル防止につながります。
変更届を「自分で手続きできるケース」と「行政書士に依頼した方が良いケース」
ここからは、専任の宅地建物取引士の変更に伴う手続きについて、「自分で手続きできる場合」と「行政書士に依頼した方が良い場合」についてそれぞれ解説します。
自分で手続きできるケース
専任の宅建士の交代手続きは、会社側(業者名簿の変更届)と宅建士個人(資格登録簿の変更)の両方を、正しい順序で行う必要があります。
入社の場合は、「個人の手続きが先、会社の手続きが後」、退職の場合は「会社の手続きが先、個人の手続きが後」という順序です。
次のような場合は、自社での対応も十分可能です。
- 手続きの順序を理解し、入退社する本人と連絡を取りながら、個人の手続きの完了状況を管理できる
- 30日以内という期限に間に合うよう、略歴書や設置証明書などの必要書類を自社で正確に収集・作成し、役所へ提出する時間を確保できる
特に問題(他社との兼任や、複数の変更手続きが重なるなどのイレギュラーな事情)がない一般的な入退社で、スケジュール管理(30日以内)ができるのであれば、不動産会社の社長ご自身でも十分に手続きは可能です。
行政書士に依頼した方が良いケース
一方で、以下のような場合は、行政書士への依頼を検討した方が安全かつスムーズです。
- 手続きの時間が取れない:日々の業務が忙しく、手続きの順番や必要書類を調べる時間が取れない、漏れがないか不安がある場合。期限を過ぎると始末書の提出も必要になるため、迅速な対応が求められます。
- 複数の変更が重なっている:専任の宅建士の交代に加えて、代表者・役員の変更や事務所の移転などが同時に発生している場合、添付書類が一気に複雑になるため、プロに任せた方が確実です。
- 新しい申請システムに不慣れ:令和7年1月から導入された電子申請システム「eMLIT」の操作に不慣れで、期限内に確実に終わらせたい場合。
費用の目安
専任の宅建士の変更届(会社側の手続き)を行政書士に依頼する場合の価格についてです。
一般的な相場:おおよそ2万円〜5万円程度
会社側の変更届だけでなく、宅建士個人の「資格登録簿の変更登録」も併せて代行してもらう場合や、上述した役員変更などの他の手続きも同時に依頼する場合は、追加費用が発生するのが通常です。
専任の宅建士が退職したら?2週間以内にやるべきこと【必要書類・手続きの流れ】まとめ
欠員発生
2週間以内
に後任を補充
変更日から
30日以内
に変更届を提出
⚠ 期限を過ぎるとどうなる?
- 1年以内の業務停止(全部または一部)
- 100万円以下の罰金
- 30日超過時は「始末書」の提出も必要
専任の宅建士の交代は、頻繁に経験する手続きではないからこそ、いざというときに「何から手をつければいいか分からない」と不安になりやすいものです。
「さえぐさ行政書士事務所」では、船橋市を中心に千葉県内の宅建業者様の変更届・免許更新をサポートしております。
「うちの場合はどうなるのか聞いてみたい」といった段階でも構いませんので、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

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